2012年05月22日

エアフロー基本類型


市販されているPCケースは数が多く、様々なものがあるが、そのエアフローもまた様々である。

したがって、まずは、エアフローを検討していく際には、様々なエアフローを類型化して、それぞれの類型別に検討していくのが、最も良い方法であろう。

エアフローの類型化も様々な分類方法があるだろうが、ここでは、吸気から排気までの空気の流れを基準に類型化していくことにしたい。

特に、吸気側に着目して分類すると、5つの類型に分類できる。
それは、「主流型」「反主流型」「煙突効果型」「反煙突型」「扇風機型」の5つだ。
名称は、煙突効果型以外は、勝手に名付けたので、名称だけでは分からないはずなので、それぞれ説明していこう。

<主流型>

主流型.jpg


これは、前面から吸気して背面から排気するという最も多くのPCケースで採用されているオーソドックスなエアフローである。
基本的で主流となっているエアフローなので、主流型と呼ぶことにした。
前面から吸気することで、空気が前面のHDDを通過し、ケース内部に流れ、主にCPUクーラーを経由して背面の排気ファンから排気されるエアフローである。
この主流型のエアフローの特徴の1つは、まずHDDの冷却性が高いということだろう。
前面ファンから吸気した空気がまず最初にHDDを通過するので、温度上昇による故障・劣化リスクが高いHDDを効果的に冷却できる点で優れたエアフローだろう。
さらに、熱に弱いとはいえ、発熱自体は高くないHDDを最初に通過するので、ケース内部の主要部分に空気が流れた時点では、風の温度は、室温からそれ程上昇していないと考えられる。
つまり、HDDをを冷却しても、まだ冷却性が高い状態を保ったままケース内に風を流すことができるので、非常に効果的なエアフローである。
内部に流れた空気は、CPUクーラーと背面上部の排気ファンの影響で、主に上方へ流れることになるだろう。
サイドフロー型のCPUクーラーであれば、メモリーの手前にCPUファンがあるので、このCPUファンの吸引力でメモリーを経由してCPUファンに空気が流れ込むことになる。
したがって、メモリーの冷却効果も高く、メモリー自体の発熱は比較的低いので、この時点でも風の温度はそれほど上昇していないはずだ。
その後、CPUファンへ流れた空気がCPUクーラーのヒートシンクを冷やし、その熱が背面ファンから排気されるエアフローとなる。
このエアフローの場合、CPUクーラーは、トップフローよりサイドフローの方が明らかに優位であり、リテールクーラーで済ます場合やサイドパネル、市販クーラーを購入して使用するならサイドフロー型を選択すべきである。
サイドフロー型による物理的干渉が生じる場合はやむを得ないが、干渉が起きないサイドフロー型が探してでもサイドフロー型にした方がいいだろう。

また、前面から吸気しHDDを通過した空気の全てがCPUクーラーへ流れる訳ではない。
グラフィックカードを設置した場合、グラフィックカードのファンの影響で、グラフィックカード下のファンへ向かって空気が流れるルートが存在する。
ただ、空気の流れる量は、CPUクーラーに流れる空気よりは少ないと推測できる。
それは、グラフィックカードのファンの吸引力よりも、CPUクーラーやその背後の排気ファンの吸引力の方が強いためである。
吸引力が強いということは、ファンの入口が部分的に負圧度が高い状態となり、その負圧部分へ向かってケース内の空気が流れるからであり、天気予報の気象図で言うと、低気圧に向かって高気圧の空気が流れこむ状態である。
グラフィックカードのファン周辺も低気圧になっており、空気が流れるが、上方のCPUクーラー、排気ファンの低気圧帯より勢力が弱いので、空気の流れは弱いと考えられる。
但し、前面ファンの風量や風圧が強ければ、空気が上方に流れにくく、そのままグラフィックカードへ向かう空気が増えるだろう。

グラフィックカードのファンへ取り込まれた空気の流れは、グラフィックカードがリファレンスモデルかオリジナルファンモデルかによって異なる。
リファレンスモデルであれば、グラフィックカード内部からグラフィックカードの排気口から背面へ排気される。
オリジナルファンの場合は、排気の一部は、リファレンスモデルと同様に背面へ排気されるが、排気の残りは、内排気となるので、ケース前方寄りからケース内に排気される。
ここで、問題となるのは、内排気された排熱が、前面ファンからHDDを通過しCPUクーラーへと向かう空気とご合流して、メモリーやCPUクーラーへと流れることである。
この場合、前面ファンからの空気とグラフィックカードの排熱が混合し、温度上昇した空気がメモリーとCPUクーラーに流れるので、メモリーとCPUの冷却性は低下する。
特に、メモリーにとっては、あまり好ましくない状態と言えるだろう。
したがって、この状態を避けるためには、なるべく外排気のみであるリファレンスモデルのグラフィックカードを選択した方が、排熱の影響を防ぐことができるだろう。
オリジナルファンモデルのグラフィックカードの内排気の問題は、このエアフローに限ったことではなく、どのエアフローであっても、排熱をケース内に排気している時点で問題となる。
グラフィックカード自体の冷却性は、オリジナルファンモデルの方が高い傾向になるので、オリジナルファンモデルの方が人気が高いが、内排気された排熱の処理を検討しなければ、他のパーツへの影響は非常に大きいだろう。

やや話が脱線したが、この主流型のエアフローは、最もオーソドックスであり、PCケースのエアフローとしては、自然な流れと言えるだろう。
また、前面から背面のエアフローがこの主流型の基本形ではあるが、背面の排気ファンだけでは、排気量が少ないので、冷却重視型のPCケースでは、上面に排気ファンを設置して、排気量を増やすことが多く、むしろ、現在市販されているPCケースでは、この前面→背面・上面の主流型を修正したエアフローが最も一般的なエアフローとなっている。
さらに、グラフィックカードの冷却や正圧化目的の吸気量増大を図る場合は、前面・側面→背面・上面のエアフローとなる。
但し、この場合、側面の風量は、前面の風量より控えめに設定しておかないと、エアフローを崩すことになり兼ねないので、注意が必要となる。
さらに底面からの吸気を追加して、前面・側面・底面→背面・上面のエアフローが採用できるPCケースもあるが、余程の理由がない限りは、3方向からの吸気は止めておいた方がいいだろう。
吸気の空気の干渉を多く、空気が対流し滞留する恐れがあり、エアフローも予測しにくくなる。

この主流型では、原形は、前面→背面であるが、修正された主流型である前面→背面・上面のエアフローが一般的に良いエアフローと言えるだろう。


<反主流型>

反主流型.jpg


これは、主流型の反対のエアフローであり、背面→前面のエアフローであるので、反主流型と呼ぶことにした。
このエアフローは、反主流型と名付けた通り、異端的なエアフローで、これを採用しているPCケースは、極僅かである。
背面吸気の利点としては、CPUの冷却性を高める点が挙げられるだろう。
主流型の前面吸気の場合、前面上部に5インチベイがあるので、CPUクーラーに対して、直線的で真っ直ぐな空気を流すことが難しい。
フルタワーケースで、前面ファンが3つ設置できるPCケースであれば、可能なものもあるが、ミドルタワーケースでは、たいてい無理である。
しかし、背面吸気の反主流型エアフローであれば、背面上部の吸気ファンとCPUクーラーの高さはほぼ同じ高さであり、しかもドライブベイがない分、前面ファンよりも近距離であるので、直線的かつ近距離から吸気ファンの風をCPUクーラーに当てることが可能だ。
これにより、明らかにCPUの冷却性は高まるだろう。
このエアフローもサイドフロー型が好ましいが、サイドフロー型CPUクーラーを逆向き、つまりCPUファンの風が背面から前面に流れるようにしなければならない。
吸気が背面なので、これにあわせて、CPUファンも180度回転させることになる。
通常のCPUファンの風の流れでは、背面吸気の風と正面衝突することになるので、空気が行き場を失い、迷走することになるだろう。

ここまでは、反主流型エアフローは、かなり良さそうに思えるが、問題は山積みである。
まず、背面吸気の空気がCPUクーラーを通過するまではいいが、その後は、メモリーを通過することになる。
CPUクーラーを経由した空気なので、当然温度上昇している。アイドル時であれば、それほど問題ないかもしれないが、高負荷時でCPU温度が非常に高くなっている場合には、メモリーを冷却効果は低く、むしろメモリーの温度上昇を引き起こす恐れがある。
さらに、その空気は、前面排気ファンに吸引されて、HDDを通過することになるので、HDDの温度上昇も引き起こすだろう。
特に、HDDは、熱に弱いので、CPUクーラーを通過した空気は、冷却効果はなく、HDDの温暖化を招くだけである。
さらに、グラフィックカードがオリジナルファンモデルで内排気であれば、事態は深刻である。
内排気された排熱もHDDを通過して前面から排気されることになるので、HDDを通過する空気の温度は、かなり高温だと推測できる。
この状態だとHDDにとっては、有害なだけであり、HDDの故障又は急激な劣化も招くはずである。

問題はこれだけではない。
リファレンスモデルのグラフィックカードを設置した場合でも、背面のグラフィックカード排気口から排出された排熱は、温度が高いので上昇する。
上昇した位置に背面吸気ファンがあるので、この排熱を吸気することになるのだ。
これでは、CPUの冷却効果さえ期待できない。
しかも、メモリーやHDDへの影響も悪化する。
オリジナルファンモデルでも一部は背面から排気されるので、少しはマシではあるが、既に述べたようにHDDへ悪影響を及ぼす。
これに加えて、電源の排熱や正圧であれば、拡張スロットの通気口やそれ以外の背面通気口から排気された排熱が上昇し、背面吸気ファンから吸気されるので、問題は大きい。

これらの問題点を考慮すると、反主流型の名前の通り、反逆的で破滅的なエアフローと言え、まさに「逆風」状態のエアフローである。


<煙突効果型>

煙突効果型.jpg


これは、Silverstone社のPCケースで採用されている底面→上面のエアフローであり、一般的に煙突効果型と呼ばれているエアフローである。
温度の高い空気は上昇するという所謂、煙突効果を利用したエアフローで、煙突効果を利用するために底面から上面、つまりケース内の熱気の上昇にあわせて、下から上へのエアフローを採用している。
実を言うと、このエアフローは、煙突効果の利点はそれほど大きくなく、むしろマザーボードを90度回転させている点と直進型のファンを採用している点が最大の利点である。
底面から上面へのエアフローを採用した場合、通常のマザーボードの設置方法では、グラフィックカードを取り付けた場合、グラフィックカードが空気の流れを阻害することになる。
そこで、底面から上面へ障害物に邪魔されることなく、空気を流すためにマザーボードを90度回転させているのである。
これにより、前面から背面へのエアフローと同様でしかもドライブベイに邪魔されることがない点で直線的で近距離から風を流すことができる。
また、直進型のファンを使用していることも冷却性が高い理由となっている。
直進型のファンであれば、底面から上面まで完全に吸気ファンの風が突き抜けるので、排気ファンに頼らなくても、ケース内の熱気を排気することが可能だ。
初期の煙突効果型では、直進型のファンではなく、通常の拡散型ファンであったため、冷却性は高いという程ではなかったが、直進型のファンを採用したことで、冷却性が高まり、煙突効果型のエアフローが完成したと言える。
しかしその反面、直進型のファンによって、必ずしも、底面から上面のエアフローである必然性は少なくなったとも考えられる。
なぜなら、直進型のファンであれば、底面から上面のエアフローでなくても、直線的なエアフローであれば、上面から底面、前面から背面でも構わないからだ。
煙突効果で熱気が上昇するのは、事実だが、その上昇する力は、人工的なファンの力と比べれば弱く、煙突効果に逆らって、上面から底面であっても、大きな差はないだろう。
むしろ、煙突効果という点では、PC設置部屋の煙突効果の方が意味があり、室温は天井付近より床付近の方が室温が低いので、底面から僅かではあるだろうが低い室温の空気を吸気できる点と排気された排熱も上昇するので、底面の吸気ファンで排熱を取り込む心配が最も低い位置になるという点の方が意味が大きいくらいだ。
したがって、煙突効果というほどの効果は実はなく、直進型のファンによって直線的なエアフローが実現できていることに最大の意味があると理解する方が正しいだろう。
しかも、直進型ファンにより、排気ファンが少ないため、無理な調整なく自然と正圧となるので、防塵性がたかい。
また、排気ファンは少なく、吸気ファンも比較的騒音の影響が少ない底面に設置されているので、静音性も高い。
このように冷却性、防塵性、静音性が高く、PCケースで考えられるエアフローの中では最高レベルであり、最良なエアフローと言える。
問題があるとすれば、マザーボードを90度回転させたことで、PCケースの奥行きが長い点とIOポートや拡張スロットが上面にあるという変則的な構造である点だろう。
つまり、エアフローは工夫して最良となっているが、使い勝手の面で問題があるので、エアフローのためにその問題点を我慢できるかどうかが一番のカギとなるだろう。

<反煙突型>

反煙突型.jpg


これは、上面吸気のエアフローで、煙突効果型と逆行するエアフローなので、反煙突型と名付けてみた。
一般的なPCケースでは、上面は排気であることが多いが、敢えて上面吸気としている。
利点としては、CPUとメモリーの冷却性が高いことだ。
上面は、CPUクーラーから一番近い位置なので、ここから直接CPUクーラーに風を流すことができる。
ただ、CPUクーラーは、サイドフロー型でもトップフロー型でも、ファンの位置が上面に向いていないので、CPUファンに風を送ることはできない。
それでも、CPUクーラーのヒートシンクを直接冷却できるという効果があるだろう。
また、メモリーも上面から風を流せば、メモリーの横から風を流すことができるので、複数のメモリーにムラなく風を流せる点で、メモリーの冷却には最も効果があるだろう。
排気は主に背面となる。
しかし、このエアフローもかなり問題がある。
まず、上面吸気→背面排気であると、上面から吸気した空気がすぐに背面上部の排気ファンから排気されるため、せっかく吸気した空気がPCケース内に流れない。
CPUを冷却する目的であれば、むしろCPUクーラーを通過した空気がすぐに排気されるのは悪いことではない。
ただ、ケース下部へ空気が流れにくく、吸気の空気がPCケース全体に行き渡らないのは問題である。
また、上面吸気→背面排気であると、机の下にPCを設置した場合、背面の排気ファンの排熱が机の下から抜けず、上面吸気ファン付近に流れることが考えられるので、その場合、排熱を吸い込む悪循環を引き起こす可能性がある。そうなると冷却性は低下する。
さらに、上面からCPUクーラーへ流れた空気の一部は、背面へ抜けずグラフィックカード上部に溜まりやすくなる。
これにグラフィックカードの熱が加わると、CPUクーラーとグラフィックカードの間に熱だまりが発生する可能性が高い。
正圧であったり、前面に吸気ファンを付ければ、多少解消できるだろうが、それでもCPUクーラーとグラフィックカードの間が他のエアフローより温度が高い状態になるだろう。
以上のことから、このエアフローも、反主流型と同様に異端的であり、マイナーなエアフローとなっていることが分かるだろう。

<扇風機型>

側面から吸気するもので、サイドパネルを開けて扇風機の風を当てるという発想を実現したエアフローということで扇風機型と名付けた。
ある意味、単純な発想をそのままやってみた原始的なエアフローとも言える。
側面吸気は、主流型のエアフローでも取り入れられているが、ここでは、大型のファンを側面に設置し、側面吸気を吸気の基本とするものを扇風機型と呼び、主流型とは区別することにする。
このエアフローは、側面から大型ファンでケース全体に直接風を当てることができるので、その点では冷却性は高い。
ただ、空気の流れという面では問題がある。
PCケース内部全体に風が当たるという点ではいいが、その後の空気の流れは制御できない。
これは、壁に向かって扇風機の風をぶち当てるのと同じことなので、壁に当たった空気は、跳ね返ってしばらく滞留することになる。
PCケースの場合では、マザーボードに当たった風が、跳ね返ってしばらくその付近に滞留することになるので、排気までに時間がかかるだろう。
しかも、空気が四方八方へ拡散するので、空気の流れも予想しにくい。
排気ファンが背面や上面にあれば、そこから排気されることになるので、その方向へ空気が流れるが、一度マザーボードに衝突した風なので、排気されるまでに時間がかかる。
このエアフローの特徴は、ある意味、エアフローではないエアフロー、つまり空気の基本的な流れ、通り道が確立されていないことにある。
他のエアフローの場合、吸気から排気まで空気の流れ、通り道がある。
しかし、扇風機型は、マザーボードに向かって風を当てるという厳密にはエアフローとは言い難いエアフローなので、吸気して風がケース内部に流れるところまではいいが、その後には明確な流れがない。
最終的に内部の空気は排気されるが、その途中のプロセスは見えにくく、どこで空気が滞留しているのか、熱だまりが発生するのか予測が難しい。
扇風機型は単純明快ではあるが、原始的、無計画なエアフローであり、エアフローを検討した結果、採用するようなものではない。
つまり、エアフローを考えるのが面倒な人がその場しのぎで取る乱暴なエアフローでしかないだろう。

以上のような5つ類型に分類してみたが、たいていのPCケースのエアフローは、このいずれかに当てはまるだろう。
5つの類型のうち、主流型と煙突効果型は、理にかなっており、人気が高いことが納得できる。
反主流型と反煙突型は、異端であり問題点が多いので、マイナーなエアフローになるのは当然と言える。
扇風機型は、原始的な発想で、そもそもエアフローとは言い難い。

したがって、エアフローを検討する際は、主流型と煙突効果型を中心に検討して、これらが抱える問題点を解決できる方策を考えていくのが、理想的なエアフローを見出す近道になるだろう。
posted by PC_Considering at 22:00| 類型別エアフロー検討 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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