2013年02月23日

グラフィックカードの内排気問題を考える。

グラフィックカードには、大きく分けて2つのモデルがある。
1つはリファレンスモデルと呼ばれているもので、GPUメーカーがグラフィックカードメーカーに対して標準モデルとしてそのまま量産可能なデザインを提供しているもので、グラフィックカードのリファレンスモデルは、たいていシロッコファンが1つ搭載されている。
もう1つは、オリジナルファンモデルで、グラフィックカードメーカーがGPUメーカーが提示したリファレンスモデルを採用せず、独自のデザインを採用したモデルで、ツインファンを搭載することが多い。

リファレンスモデルの場合、ファンが1つでその排熱は背面の排気口から排出される。
また、ファンは通常のファンよりも冷却性に優れたシロッコファンが採用されている。
よって、本来であれば、これで十分なはずであるが、GPUの性能が向上するにつれて発熱量も増大したため、十分冷却できるとは言えず、さらに温度を下げる工夫が必要となる。
また、シロッコファンは、騒音レベルが高く、静音性を害するという弱点もある。

そこで、登場したのが、グラフィックカードメーカーが独自に採用したオリジナルファンモデルで、シロッコファンよりも冷却性は劣るがサイズが大きい標準的なファンを2つ設置することで、シロッコファン1つよりも冷却性を高め、しかも静音化を図るという工夫を凝らしている。
つまり、オリジナルファンモデルは、リファレンスモデルよりも冷却性、静音性に優れていることが多く、その結果、現在ではオリジナルファンモデルが人気を集めている。

しかし、問題になるのは、ファンを2つ設置することで、排熱がグラフィックカードの両端から排気される点である。
背面側の方は、そのままPCケース外に排熱が排気されるので問題ないが、反対側の方は、PCケース内に排熱が排気されることになる。
これでは、いくらグラフィックカードの冷却性が高くても、PCケース内の温度が上昇し、他のPCパーツに悪影響を与えることになるだろう。

内排気エアフロー.gif

しかも、図に書いたように、一般的なPCケースのエアフローが前面から背面、上面への流れになっているので、ケース前面から吸気した空気と排熱が合流し、その空気がCPUクーラーのファンへ引き寄せられるように流れることが多くなるはずである。
そうなると、室温よりも高い温度の空気でCPUクーラーのヒートシンクを冷却することになり、いくら優れたCPUクーラーを使っても冷却性には限界がある。
なぜなら、当然の事であるが、空冷である以上、基本的に取り込んだ空気の温度よりも冷却することは不可能であるので、CPUクーラーに流れる空気の温度が高い時点で冷却効果は落ちることになるからだ。
また、ハイエンドクラスのグラフィックカードの場合、長さが30cm近くあり、ケース前面に近い位置から排熱が排気されることになり、しかもハイエンドクラスであれば排熱の温度も高いはずである。
そうなると、ますますCPUの冷却性への悪影響は大きくなるだろう。
また、メモリについても当然排熱によって上昇した空気が通過することになるので好ましくない。
このような現象が発生した場合、同一の環境でこの現象が発生しない場合よりもCPU温度が上昇することになる。

このような現象を回避する方法としては、前面から背面への直線的なエアフローを採用するのがいいだろう。
直線的エアフローであれば、PCケース内に廃棄されたグラフィックカードの排熱を背面へ押し出すことができ、しかもケース前面からCPUクーラーへ直線的に風を送ることができるので、CPU温度、ケース内温度ともに悪影響を受けることはないだろう。
ただ問題なのは、直線的エアフローを採ることができるPCケースが少ないことである。
ケース前面の上方、つまりCPUクーラーと平行に位置にファンを取り付けることができるPCケースは非常に少ない。
よって、今使っているPCケースですぐにできるわけではない。

では、簡単にできる他の有効なエアフローになるが、現実的には有効な方法はあまりない。
グラフィックカードの内排気熱がCPUクーラーに向かわないように、前面吸気を止め上面前方寄りから吸気する方法が考えられるが、拡散型のファンを使用した場合、排熱がHDDケージやグラフィックカードのファンへ向かいHDDやグラフィックカードに悪影響を及ぼす恐れがある。
Air Penetratorのような直進型ファンの場合、CPUファンが上面吸気から吸気した空気を取り込みにくくなり、またグラフィックカードの内排気熱を底面まで追いやることはできるが、直進ファンの風が床に激突するような状態となり、ケース底の空気の流れが対流あるいは滞留することになるかもしれないので、あまり好ましくはないだろう。

また、前面に直進ファンを設置しグラフィックカードの内排気熱を背面へ追いやり、上面に拡散ファンを設置し、CPUクーラーへ空気を流すという方法が考えられる。
これはグラフィックカードの内排気熱がケース上方へ向かうことを防止するには有効な方法である。
ただ、問題になるのは上面吸気である点で、そもそも上面吸気にすると、PCケースを机の下に設置している場合、長時間PCを使用していると背面から排気された排熱が煙突効果で上昇しケース上面へ流れることが考えられる。
その場合、背面の排熱を上面ファンで吸気しケース内に戻すことになるので、上面吸気はそもそも好ましくはない。
よって、上にいくつか挙げた上面吸気の方法は、机の下にPCを設置した場合、背面の排熱を吸気するという恐れがつきまとうことになる点を意識しなければならない。
また、防塵性を考えると、上面にダストフィルターが設置されているPCケースは僅かであるので、自分で対策を採る必要もある。

では、前面の直進ファンだけで、上面吸気を止めたらいいのではないかとなるが、CPUクーラーへ空気が流れにくくなる。
実際には、この状態でPCが動作した場合、CPUクーラーのファンの付近が負圧となり、直進性があるファンであっても、CPUファンへ向かって空気が流れることになるだろう。
その場合、やはりグラフィックカードの内排気熱もCPUファンへ流れることになるので、前面に拡散ファンを設置した場合よりはマシかもしれないが、結局は排熱も流れることになる。

そうなると、グラフィックカードの内排気熱が排気される側面前方寄りの位置に排気ファンを設置して発生した排熱を速やかにPCケース外へ排出するのはどうかとなるが、これは有効な方法ではあるが、既存のPCケースでこの位置にファンを設置できるケースは極僅かであるので現実的には難しいだろう。
また、グラフィックカードの内排気熱がCPUクーラーのファンへ向かわないように仕切りの板を設置して、グラフィックカードの内排気熱は前面に直進ファンを設置し背面へ流し、CPUクーラーへの吸気は上面に拡散ファンを設置して行うという考え方もできるが、大型のCPUクーラーを設置した場合、CPUクーラーとグラフィックカードの間隔があまりなく、グラフィックカードの上方から背面へ排熱を流すのは難しい場合がある。
また仕切り板を設置するとしても、板は自分で用意しなければならず、メモリもあるので、その点を考慮して自分で加工する必要があるので、工作能力が必要となりそうだ。

以上のように、エアフローでグラフィックカードの内排気熱を処理するのはなかなか難しく、完全な方法はなかなか見つからない。
一番有効で実現可能なのは、前面直進ファン、上面拡散ファンのファン構成だが、前述の通り、机の下に設置している場合は、背面の排熱に注意しなければならない。
机の下に設置している場合は、壁と机の間に少し間隔を設け、背面の排熱が壁と机の間から上へ抜けるようにしておいた方がいいだろう。
また、防塵対策も自分でする必要がある。
これが可能であれば、一番有効な方法となりそうだが、完全な方法とは言えないのではないだろうか。

では、エアフロー以外の方法で排熱を処理できないかとなるが、考えられるのは、簡易水冷型CPUクーラーを用いる方法である。
簡易水冷型CPUクーラー本体にはファンがないので、グラフィックカードの排熱を吸い込む心配はないので、CPUファンが排熱を取り込んでCPU温度が上昇することはなさそうである。
しかし、簡易水冷型CPUクーラー本体にはファンがないが、ラジエーターにはファンがあるので、このファンがグラフィックカードの内排気熱を吸い込むことになれば、空冷クーラーと同じことになる。
ラジエーターを上面に設置した場合、空冷のCPUファンと若干位置が異なるものの、やはりラジエーターのファンが内排気熱を吸い込むことになれば、CPU温度に悪影響を与えることだろう。
そうなると、背面にラジエーターを設置し、上面のファンでグラフィックカードの内排気熱を排気するという方法が考えられる。
内排気熱の対処としては有効な方法となるが、背面に12cmファンが2つ設置できるPCがケースでないと、CorsairのH100のような大型ラジエーターのクーラーは設置できないことになる。
また、上面ファンで排気しても、背面へも少しは空気が流れるので、内排気熱の影響が全くないわけではない。
上面ファンの回転数を上げ排気量を増やすことで背面のラジエーターへ空気が流れにくくすることができるが、排気量が増大すれば、ケース内が負圧になりやすいので注意が必要となる。

また、ラジエーターのファンを吸気とする方法もあるが、ラジエーターの熱がPCケース内に排気されることになるので、CPUの熱の内排気という別の問題が生じることになってしまうので、止めた方がいいだろう。

以上のように考えていくと、グラフィックカードの内排気熱に対処するのは難しい。
ここまで苦労するならば、リファレンスモデルを選択し、PCケースにサイドファンを設置して冷却する方が簡単であり、内排気を心配する必要もない。
もちろん、オリジナルファンモデルにサイドファンを設置した方がより冷却できるかもしれないが、内排気を気にするならば、オリジナルファンモデルは避けた方がいいだろう。
もちろん、CPUが内排気熱の影響を受けても、CPUクーラーの冷却に余裕があって数度温度が上昇しても問題ない場合であればいいだろうし、CPUよりも高額なグラフィックカードを使用しているならば、グラフィックカードの冷却を優先するという考え方もできる。
しかし、出来る事ならPCケースの中に排熱を排気するという事態はなるべく避けた方がいいはずだ。

いずれにしろ、グラフィックカードを購入する場合、上記の事を十分考慮した上で選定した方がいいだろう。
posted by PC_Considering at 00:04| エアフロー総論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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