2013年02月08日

流体力学を利用して風量を増幅するPCケースを企画する。


今回のPCケース企画案は、かなり大胆な案である。
よって、実現できるか、効果があるか、はっきり分からないが、あくまでアイディアということで書いてみたいと思う。

以前から考えていたのだが、少ないファンでより多くの風量を生み出す方法があれば、余計なファンを設置しなくても冷却性が高く、しかも静音性も高めることができるはずである。

ただ、言うのは簡単だが、実現する方法となるとなかなか難しい。

実現する方法があるとすれば、負圧をうまく利用して、風量を稼ぐしかないだろう。
その有効な方法は、PCケースの前面あるいは前方に負圧を発生させ、前面のメッシュ部分から多くの空気を取り込むことであろう。
問題は、どうやってその負圧を発生させるかになるが、そのヒントとなったのが、これである。



ダイソン社のファンなし扇風機「AirMultiplier」である。
数年前に発売され話題になったので、たいていの人は知っていることだろう。
この扇風機の特徴は、見た目から分かる通り、ファンがないことである。
しかし、最大の特徴は、空気力学をうまく利用している点にあると言える。
つまり、扇風機下方から空気を取り込み、それを円状の輪に空気を送ることで、実際に輪から流れる空気の15倍の空気を送り出すことができる点である。
それを実現できるのは、輪の構造が工夫されているからで、この輪は、動画からも分かる通り、飛行機の翼のような形状になっており、ここから空気を流すことで周辺に負圧を発生させ、その負圧による気圧差によって、輪の後方の空気が前方に流れるという仕組みになっている。

これは、飛行機やF1等で採用されている流体力学の理論の応用であり、「空気の流れが速い部分は気圧が下がる」というベルヌーイの定理をうまく扇風機に利用した例である。



ベルヌーイの定理をうまく利用すると、空気の流れをコントロールしたり、流れる空気を増幅することが可能となる。
飛行機の場合、翼の形状を工夫することで、翼の上方を流れる空気の流れを速くすると、その部分の気圧が低下し、翼下方の気圧が高い空気が下から上へ押し上げる。
これが揚力となって飛行機は上昇するのである。
F1の場合は、特に高速コーナーで遠心力に負けないだけのタイヤグリップが必要となるので、地面に向かって車体やタイヤを押さえつける空気の流れとするため、飛行機の翼を逆さまにした状態で翼をつけることになる。
F1ではこれをダウンフォースと呼んでおり、地面方向への空気の流れが強いほどスムーズかつ高速にコーナリングできるので、タイムが短縮できる。

このように、流体力学、特にベルヌーイの定理をうまく利用している例は既に数多くあり、エアフローを利用してPCパーツを冷却するPCケースにおいても、取り入れる価値は十分あると以前から考えていた。

問題となるのは、いかにしてPCケースに取り入れるかになるが、その点でダイソンの扇風機「AirMultiplier」は、参考になる点が多い。

仮に、ダイソンの扇風機の発想をそのままPCケースに活かして、ケース前面の周囲を飛行機の翼の断面のような形状にして空気を流すと、ケース前面が負圧となり、流す空気の約15倍の空気がケース前面から取り込むことが可能となる。
もちろん、ダイソンの扇風機の場合は、上方からも空気が流れこむので、PCケースの場合は、15倍の空気を取り込むことは難しいがそれでも5〜10倍の空気を取り込むことが可能だと考えられる。
よって、仮に、ケース前面から50CFMの空気を流した場合、250〜500CFM相当の空気をPCケース内に流すことができることになり、これまでのPCケースの数倍以上のエアフローを実現できることになるだろう。

しかし、これを実現するにはいくつか問題がある。
まず、ダイソンの扇風機には、下方にモーターやファンを設置するスペースがあるが、これをPCケースの前面に設置するのは困難である。
PCケースの前面には、5インチや3.5インチのベイが設置されるのが通常であるので、モーターを設置するのは難しいはずである。
無理に設置することは可能だが、その分ベイ数を減らすことになるだろう。
また、モーターを設置して、ケース前面の周囲に飛行機の翼の形状を実現させるとすると、かなりコストがかかることになりそうだ。
もし、販売価格が4〜5万円くらいになるとしたら、どんなにエアフローが良くても購入する人は僅かであろうし、普通のPCケースの前にダイソンの扇風機を別途購入して置いた方がいいかもしれない。
また、ダイソンの扇風機の仕組みをそのまま真似ると特許権侵害の問題も生じる恐れがある。
したがって、そのままダイソンの扇風機の仕組みをPCケースに取り入れるのは諦め、できるだけ容易に、しかも安価で流体力学を活用する方法を考えてみることにした。

出来そうなことは、ケースの前面に飛行機の翼のような形状の物体を設置し、負圧を発生させることだが、設置の仕方がなかなか難しい。
どうしても、前面のベイが邪魔になってしまう。
また、流体力学を利用するならば、なるべくファンの数を減らして静音化を図りたいところだ。

とりあえず、考えたPCケース案は以下のようなものとなった。

PCC-AF-V001_P.gif

上記の図のように、PCケースの前面に18cmファンを設置、そのファンの風が通過する位置に2枚の翼を設置してみた。
これにより、空気の流れは以下の図のようになると予想される。

PCC-AF-V001.gif

2枚の翼の両端、つまり翼の膨らみの部分に風が流れることによって、その周辺の気圧が下がり負圧となり、この負圧の部分へ18cmファンの上下の3.5インチベイのメッシュ部分から風が流れこむことで、18cmファン+αの風をPCケース内に流すことができることになる。
ただ、+αがどのくらいになるかについてははっきり分からない。
18cmファンの奥に2枚の翼を設置しただけなので、大きな負圧が発生するとは言えず、ファンの風量の数倍の空気が流れこむとは考えにくい。
また、2枚の翼を接近させると、2枚の翼を流れる空気の速度が速くなり、この部分が負圧になると空気の流れが変わることになるだろう。
個人的には、流体力学の専門的な知識を持っていないので、この点に関しては、はっきりした予想はしにくい。
ただ、2枚の翼の設置の仕方を工夫して、ファンの上下に大きな負圧を発生することができれば、ファンの風量とは別にPCケース外から空気を取り込むことは可能となるはずであろう。
図のような翼の設置方法がベストかどうかは分からないが、多少なりとも効果はあると考えている。
翼を設置することで、ファン1枚の風量以上の空気を取り込めるならば、当然エアフローは向上し、さらにファンの数が少ない分静音性も向上することだろう。
例えば、SilverStone社の「TJ08-E」は、吸気ファンが18cmファン1枚のPCケースであるが、同じ18cmファン1枚ならば、図のような翼を付けることで、「TJ08-E」以上のエアフローを実現することができるはずであり、その点では大きなメリットがあると考えられる。
問題があるとすれば、ベイ数が減少することであるが、図のような案でも3.5インチベイを4つ、5インチベイを2つ確保することは可能だ。
ケースの高さは、推定で480mmとTJ08-Eより100mm高くなるが、その代わりATXマザーボードに対応できる寸法になっている。
18cmファンの前後から空気を取り込めるので、ATXマザーボード全体に空気を流すことが可能であり、高さを増した分だけの価値はあるだろう。
また、2枚の翼を軸を中心として可動式にすると、以下の図のように風を流れる部分を調整することも可能となる。

PCC-AF-V001_P2.gif

このように調整すると、マザーボード全体やCPU部分に集中してファンの風を流すことができ、必要な部分に向けて風を制御することが可能である。
ただ、この場合の難点は、ファンの風と翼の角度、つまり迎え角が変動するので、負圧の程度も変動し、ファン以外の空気の取り込み量も変動することになる。
図のような場合には、負圧の程度が減少し、飛行機で言えば失速したような状態となるので、ファン以外から空気の取り込み量は減少することになるだろう。
この点については、まだ改良の余地があり、検討していかなければならないが、ファンの風向きを調整できる点では翼は効果的なはずである。

コストについては、翼の形の文鎮ような塊を2つ設置することになるが、素材次第では安価で収まるのではないかと考えている。
できれば、アルミ製にしたいが、場合によってはプラスチック製でも十分であろう。
飛行機の翼の効果が発揮できれば、素材は何でも構わないはずである。
可動式にするとしても、翼を長いネジで固定し、そのネジを緩めて調整すれば可動させることは難しくはない。
したがって、コスト面では大きな負担にはならないと考えることができそうだ。

一番の問題は、やはり効果であるが、ファン以外から取り込める風量が小さい場合には、素直に18cmファンを2枚設置した方がむしろ風量が多いということもあり得るだろう。
そうだとすると、わざわざ翼を設置するのは、あまり意味がないことになるが、今回はあくまで流体力学をPCケースに応用した試作案として、なるべく少ないファンでより多くの風量を取り込み、さらに静音化するという視点で検討しているので、その点は了解して頂きたい。

まだまだ検討の余地は多く、この方式がいいかどうか分からないが、流体力学を利用して多くの空気を取り込むという発想は、PCケースにも必要ではないだろうか?

流体力学は飛行機やF1だけの話ではない。
PCにエアフローが必要である以上、実用化ができかは別として、PCケースにも流体力学を利用するという視点は面白いのではないだろうか。
飛行機やF1に翼があるなら、PCケースに翼があっても変ではないだろう。
むしろ、今まで誰も考えてなかったとしたら、その方が変である。

今回は、あくまで素人が考えた案なので、改良の余地は多いと思うが、この案がPCケース界に一石を投じ、新しい発想や潮流を生み出す一つのきっかけとなれば幸いである。
posted by PC_Considering at 21:35| PCケース企画案 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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