2012年06月04日

エアフローと静音性


PCに静音性を求める人は多い。
確かに、PCが静かな方が好まれるのは当然だろう。

しかし、PCにとって、静音性より重要なのは、冷却性である。
PCを基準に考えると、静音性が低いことがPCに害を与えることはないが、冷却性が低い場合には、PCの故障や寿命の短縮を招くことがあり得る。

静音性というのは、あくまでPCを使用するユーザー側の問題であり、PC自体には悪影響はないのだ。
むしろ、少々うるさくても、ファンの回転数を上げ、冷却性を高めた状態でPCを使用する方が、PCにとっては、好ましいだろう。
少し極端なことを言うと、PCを使用するユーザーが我慢できるならば、PCはうるさくても構わない、むしろ、うるさいことは冷却していることの証であると言えるかもしれない。

ただ、実際には、人間の都合を考えれば、静音性は無視できない。
そこで、静音性の向上に取り組むことになるわけだが、その際に注意しなければならないことがいくつかある。

まず、述べたように、静音性よりも冷却性の方が重要なので、まず最低限の冷却性は確保しなければならない。
これを無視して、いきなり静音化に取り組むのは、手順として間違っているし、静音化のためにPCの故障や劣化のリスクを増大させるのは、基本的に間違っているだろう。
もちろん、短期間でパーツを交換する人も自作ユーザーの中では少なくない。
そういうユーザーであれば、冷却性よりも静音性を重視しても構わないだろうが、それでも不意なトラブルや故障に遭遇するリスクは高まるだろう。
いくら短期間でパーツを買い換える場合でも、不意なトラブルは厄介なものである。
したがって、そういったリスクを低減して、信頼性を高めた状態でPCを使用したいなら、少なくとも最低限の冷却性は、必要になるだろう。
よって、静音化する前に、まずは冷却性を確保することから始めなければならない。

冷却性を確保できた上で、静音化に取り組むことになるが、まず初めに検討することは、ファン構成とエアフローである。
冷却性を確保した状態であっても、それが好ましいエアフローでなければ、冷却性のために必要以上のファン構成、つまりファンの数が多すぎることがある。
別の言い方をすれば、ファンの冗長構成と言うことができるが、エアフローの設定や調整が正しくないと、無駄にファンの数が増えたり、回転数が高い状態で使用することになる。
これでは、冷却性は高くても、無駄に静音性を低下させているだけである。
したがって、この無駄を省くことが静音化の第一歩になるだろう。
エアフローを改善し、ファンの無駄を省く方法は、具体的にPCケース毎にエアフローを詳細に検討しなければならないが、別途説明するとして、ここでは割愛することにしたい。

次に、そのファン構成で回転数を変動させ、温度変化を調べてみるといいだろう。
回転数を上げれば、冷却性が高まるが、ファンの数が多く、エアフローもいい状態であれば、一定の回転数以上になると、あまり温度変化しない場合がある。
その状態になると、回転数を上げたままで使用するのは、単に無駄にうるさいだけとなる。
したがって、その際は、温度変化する回転数まで下げればいいだろう。
言い方を変えると、これが、最も冷却性が高い状態で、かつ静音性を重視した回転数ということになる。
冷却性を維持した状態で、最も静音化した状態なので、冷却性の点では、この状態で使用するのが好ましい。
ただ、これでは少しうるさい場合もあるだろう。また、冷却性が十分である場合には、多少温度が上昇しても問題ない場合もある。
その際は、温度変化を監視しながら、回転数を下げて、静音化するといいだろう。
そして、許容できる温度まで回転数を下げると、その状態が、冷却性を考慮した上で最も回転数が低い状態となり、適切な静音状態ということになる。

この方法であれば、静音化のために冷却性を犠牲にすることはなく、冷却性を意識した上で静音化できるので、静音性だけを意識した設定と比べて、PCの故障や劣化のリスクが増大することはあまりないだろう。

ただ、ファンコンがないと、細かい設定ができないことと、回転数を調整する際に、全体のエアフローのバランスを損なわないように配慮することが必要になる。
この点をクリアできれば、冷却性の限界値を見極めた上で、静音化できるので、静音化にだけ偏った調整を避けることができるだろう。

ただ、上記のような方法で静音化しても、十分に静音化できない場合もあるはずだ。
あくまで、冷却性を損なわない範囲での静音化であるので、当然かもしれない。
そこで、次に取り組むのは、静音性が高いファンに交換することになるだろう。
PCケースに標準で搭載されているファンは、比較的安価なものであることが多く、あまり静音性は高くないことが多い。
これを市販の静音性が高いファンに交換することでファン構成やエアフローを変更することなく、静音化することが可能だ。
ここで、気を付けなければならないのは、静音性だけでファンを選択してはならないことだ。
単純に静音ファンであると、形状や回転数が少ない等の理由で風量が少なくなっているものも多い。
したがって、風量や静圧が低下しないもので騒音レベルが低いファンを選択しなければならない。
また、ファンの騒音レベルは、20dBA以下のものから選択すると良い。
20dBA以下であれば、人間の耳には、ほとんど騒音と感じないレベルであり、また、これが複数になっても、それほど騒音レベルも上昇しないだろう。
30dBA前後のファンが少数より20dBA以下のファンが多数の方が、まだマシと考えることができる。

また、ファン自体の騒音だけでなく、ファンの回転によって、PCケースが振動することを防ぐことも重要である。
PCケースが振動すると、「ジー」「ガー」といった共鳴音を発することがあり、ファンの回転音よりも耳障りになることがある。
これは、一般に、ビビリ音と言われているが、この騒音を防ぐことができると、ファンの回転音は聞えていても、それほど気にならないということも多い。
その点では、静音性を高める上で、最も重要であると言うことができる。
この防止策として、有効なのは、ファンの振動の影響を受けにくい強度があるPCケースを選択することと、PCケースのファン設置口とファンとの間に防振ゴム等を設置することだ。
PCケースについては、購入する前に実物を触って、ファン設置口付近を押す等して、強度や鉄やプラスチック等の厚さを確認し、振動に強いかどうか確かめてみるといいだろう。
もし、その部分がベコベコしたり、ガタつきがある場合には、ファンが高回転で動作した際に、ビビリ音が発生する確率が高いので、静音性を重視するなら、なるべく避けた方がいいだろう。
それでも、そのPCケースを使用したい場合や、既に所有しているPCケースでビビリ音対策をしたいならば、防振ゴムを使用して、ファンの振動をPCケースに伝わらないようにするといい。

また、PCケースの選択時に、前面扉やケース内部に防音シートが装備されている静音重視型の製品を選択するのも静音性向上に有効だろう。
ただ、静音重視型のPCケースは、ファンの設置可能数が少なく、限られたスペックでしか使用できないことが多いので、CPUやグラフィックカードのスペックが高い構成で、より静音化したい場合には、冷却性が確保できず、不向きである。

以上、静音性について語ってきたが、ポイントは、静音性を検討する前に、まず冷却性を確保することである。
そして、冷却性が確保できたならば、ファン構成やエアフローを見直して、より少ないファン構成で冷却性を維持する方法を考え、実行する。
それができたならば、温度変化を見ながらファンの回転数を調整したり、ファンを静音ファンに変更してみることだ。
これで、冷却性を意識しつつ、ファンの回転音を減少させ、静音化することができるだろうが、回転音以外にビビリ音が発生することがあるので、PCケースの選択や防振ゴム等で、この対策をすると、冷却性と静音性の両立が実現しやすくなるだろう。

繰り返しになるが、冷却性を犠牲にする静音化はあまりお勧めしない。
PCにとって重要なのは冷却性であり、優先順位は、静音性より冷却性の方が高いはずだろう。
この点に意識して、冷却性を維持した状態で、より静音性を高める工夫をするのが、一番良い方法だろう。

posted by PC_Considering at 21:49| エアフロー総論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。