2012年05月26日

正圧化の盲点


正圧化の利点については、これまでに述べているが、もう一度確認しておこう。

正圧は、ケース内の気圧がケース外の気圧よりも高い状態のことであり、吸気量の総量が排気量の総量より多いと正圧となる。
正圧の状態では、吸気過多であるので、PCケースでファン以外で通気できる部分、つまり、背面の通気口や拡張スロットのブラケット、光学ドライブの隙間等から、余分な空気がケース外へ排気されることになる。
したがって、正圧であれば、吸気ファン以外から吸気しないため、吸気ファンにダストフィルター設置等の防塵対策をしていれば、防塵性を高めることができる。
また、通気口等から吸気しないので、いったん排気した排熱が通気口等から逆流して侵入することがないので、排熱による冷却性の低下を防ぐことができる。
これらの点から、正圧化することは利点があり、排気量を十分確保した上でそれ以上の吸気量にして正圧化すると、冷却性、防塵性に優れたPCにすることができる。

以上のように、正圧化には利点があり、正圧化に取り組む人が多いのだが、正圧化の際に、意外な盲点があることに気づいていない場合がある。
その点に気付いていないと、正圧化したつもりでも、実は負圧であったということがあり得る。
それは、正圧化の盲点とも言えるものであり、今回は、その盲点について考えることにしよう。

【盲点その1 ファンの数で正圧化している場合】
正圧化する場合、手っ取り早いのが、排気ファンの数より吸気ファンの数で正圧化する方法である。
排気ファンが1つであれば吸気ファンを2つ、排気ファンが2つであれば吸気ファンを3つというように、単純に考えると、吸気ファンの数を排気ファンより多くしておけば、正圧化できるという考え方によるものだ。
確かに、同一ファンでしかも回転数も同一であれば、ファン1つあたりの風量は同一なので、ファンの数で判断することはできる。
しかし、実際には、排気ファンと吸気ファンで別のファンを使用していたり、同一のファンでも回転数の設定が異なっていることがある。
この場合には、当然、ファンの数で判断するわけにはいかない。
正圧化するには、吸気の風量を排気の風量より多くすることになるので、ファンの数ではなく、風量で判断しなければならない。
具体的には、それぞれのファンの風量(CFM)を調べ、吸気と排気のCFMをそれぞれ合計して吸気のCFMの合計の値が排気よりも高くする必要がある。
これによって、初めて正確な正圧化ができる。
ファンの数でも、明らかに吸気ファンが多い場合や、それぞれのファンの回転数にほとんど差がない場合であれば、正圧の判断ができることもある。
しかし、正確に設定したいならば、CFMの値で判断することになるだろう。

【盲点その2 ダストフィルターによる風量の減少】
風量(CFM)の値で排気量より吸気量の値が高い状態であれば、正圧になっていると思いたいところだが、実際には、これでは十分ではない。
なぜなら、吸気ファンにダストフィルターを設置している場合、ダストフィルターによって、吸気ファンの風量が減少しているからだ。
おそらく、正圧化する場合、防塵性の向上を目的の一つとしていることがほとんどなので、吸気ファンにダストフィルターを設置していることが大半であろう。
その場合、ダストフィルターやファンによって減少率に差があるものの、ダストフィルターの設置によって風量は確実に減少する。
そのため、排気量より吸気量をやや多め程度に設定している場合には、実際には負圧になっていることが多いのだ。
したがって、ダストフィルターによる風量の減少分を見込んで吸気量を設定しないと正圧化することができない。
では、ダストフィルターによる風量の減少分をどの程度見込めばいいのだろうか?
この点については、実際にダストフィルターを設置して、風量を計測しないと分からないのだが、一般の自作PCユーザーがこれを行うのはなかなか難しいだろう。
一応主要なファンについて計測した結果がYouTube動画にあるので、それを紹介しておこう。













代表的なファンについていくつか観てもらったが、ファンによって、ダストフィルターによる風量の減少率にばらつきがあることが分かるだろう。
6〜30%でばらつきがあり、大体、15〜20%であることが多い。
また、同一メーカーの類似した製品であっても、減少率に差がある場合もある。
ただ、言えることは、回転数が高く、静圧(mmH2O)の値が高いと、減少率が下がる傾向にある。
これは、静圧度が高いと、風の吸引力が高まるので、ダストフィルターがあっても、風量が減少しにくいことからであろう。
したがって、吸気ファンは、静圧の値が高いものを選び、回転数を上げて使用するのがいいだろう。
ただ、回転数を上げた場合、当然ノイズレベルが高くなるので、静音性は損なわる恐れがあるので、回転数が高いものでも、比較的ノイズレベルが低いものを選ぶことになるだろう。
そうなると、かなりファンの選択肢はかなり限られることになるが、これはやむを得ないかもしれない。
また、ダストフィルターに埃が溜まっていると、さらに風量は減少するので、その点も考慮して、大体20%程度の風量が減少する想定で吸気量を算出するといいだろう。
減少率が低く、ノイズレベルも低いものでは、Enarmaxの「CLUSTER UCCL12」「EVEREST UCEV12」、サイズの「Gentle Typhoon」をお勧めしたい。
これらのファンは、減少率が6〜11%程度と非常に低く、ノイズレベルも11〜15dB程度と静音性も高い。
特に、Gentle TyphoonはRPM別に製品が揃っているので、必要な風量のものを購入すれば、ファンコンが不要になるだろう。

【盲点その3 部分負圧】
風量をダストフィルターによる減少を考慮した上で算出し、排気量より吸気量の値が上回っていれば、PCケースは正圧となる。
しかし、ここでも盲点がある。
正圧になるのは、PCケース全体であって、PCケースの部分によっては負圧になることがあり得る。
その可能性が一番大きいのは、電源のファンを上向きにした場合だろう。
電源をPCケースの底に電源ファンが上向きになるように設置した場合、PCケース全体は正圧であっても、電源ファンの静圧、つまり吸引力によって、背面の通気口や拡張スロットのブラケットから吸気することがあり得るだろう。
これは、PCケース全体の正圧度やエアフローにもよるが、正圧であっても正圧度が低く、吸気ファンの風が背面下方に流れにくい場合には、ファンの吸引力によって電源上部周辺が負圧となり、周囲から空気を吸い込むことになる。
そして、比較的近い位置にある通気口や拡張スロットのブラケットからケース外の空気をダストフィルターなしで吸気することになる。
このような状況が発生した場合には、PCケースは正圧であっても、吸気ファン以外から吸気することになり、防塵性も低下し、排熱の侵入による冷却性の低下が起こることになるだろう。
これでは、苦労して正圧化した意味がない。
したがって、電源は、極力下向きに設置して、背面から吸気を避けるべきだろう。
最近のPCケースは、底面に電源用の吸気口が付いている製品が多いので、その場合は、下向きにすべきである。
電源用の吸気口がないPCケースの場合も、たいていは電源の振動防止用のラバーがあるので、1cmくらいは電源が浮いた状態となり、下向きに電源を設置しても吸気することは可能なので、そうした方がいいだろう。
場合によっては、下向きに電源を設置したことで、電源ケーブル、特にCPU用であるEPS12Vケーブルの長さが足りなくなることがあるだろうが、延長ケーブルを利用してでも下向きに設置した方がいい。
また、電源を下向きに設置すると、ネジ類等を電源ファンの中に落とすリスクも減るという副次的効果もあるので、その点でも上向きよりは下向きの方がいいだろう。

以上、正圧化の盲点ということで説明したが、盲点を考慮すると、なかなか正圧化するのは、大変であることが分かるだろう。
しかし、PCケースやファンを吟味して選択し、ダストフィルターによる風量の減少分を考慮した上で定量的に風量を計算し、さらに電源を下向きに設置しておけば、正圧化は可能である。
面倒ではあるが、正圧化の利点を考えれば、十分その苦労は無駄にはならないであろう。


CUSTOM (カスタム) 風速/風量計 WS-01 / カスタム
サイズ 日本電産サーボ Gentle Typhoon 12cm 1150rpm D1225C12B3AP-13 / サイズ
サイズ 日本電産サーボ Gentle Typhoon 12cm 1450rpm D1225C12B4AP-14 / サイズ
posted by PC_Considering at 00:07| エアフロー総論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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