2014年03月10日

Mac Pro (Late 2013)のエアフローを検討する。


今回は、自作PCの話ではなく、Macの話である。
Appleから斬新なデスクトップパソコン「Mac Pro」が発売された。
発表、発売からかなり日が経ってしまったが、ユニークな構造のパソコンなので、今回はこのエアフローを検討していくことにした。

まず、外観だが、小型の円筒形という自作PCにはない独特の形状をしている。
ちなみにドライブベイはなく、SSDが1枚搭載されているだけで、これが小型化できた要因の一つとなっている。
そして、本体の中は、独自規格のマザーボード1枚とグラフィックボード2枚、合計3枚のボードがトライアングル状に配置されており、その3枚のボードはヒートパイプで中央のヒートシンクとつながっている。
そして、ヒートシンクに集められた熱を本体上部の排気ファンで外部へ排気する構造になっている。

発想としては、本体の熱を中央のヒートシンクに集約し、それを上部の排気ファンで外へ逃すという合理的な考えに基づいていると思われる。
また、本体下部に吸気口があり、ここから吸気し、上部の排気ファンから空気を排出するわけだから、煙突効果型のエアフローと考えていいだろう。
しかも、内部は3枚のボードがトライアングル状で、その中央にヒートシンクという空間的に狭い状態になっているので、広い空間と比べて速い気流が発生するので、程度は分からないが冷却効果は高まると考えられそうだ。

以上のような構造を見ると、かなり合理的に考えられた優れたエアフローと言っていいだろう。
小型で省スペース、Xeon、デュアルGPUというハイスペック構成の熱を中央のヒートシンクに集約、内部の空間を狭くして速い気流を発生させ、煙突効果を利用して上部から熱を排気、しかもファンは1つだけで、静音面も重視する。
合理的で鋭い発想がこの1台に詰まっていると言っても過言ではないだろう。
自作PCのように決められた規格のパーツを使用する場合、またドライブベイがある場合、実現するのがまず無理な構造なので、自作PCとの比較はできないが、それでもAppleの開発者はよくぞ考えたと、とりあえず褒めておこう。

ただ、少し気になることがある。
本当にこれで冷却できるのか、ということである。

確かに非常によく考えられた構造ではあるが、XeonとデュアルGPUという膨大な熱を1つヒートシンクで冷却、しかも排気ファン1つという構造で冷却可能なのだろうか?
ヒートシンクに関しては、実機を見たわけでもなく、動画や写真でも詳細を確認できなかったので、大きさや形状はよく分からないが、おそらく、ここまで練られた製品であるので、相当な大きさで形状も工夫が施されているものと思われる。
しかし、それでも限界はあるはずだ。
低スペックな構成ならともかく、Xeon(TDP130W)、AMD FirePro D500(TDP116W×2)という構成、TDPベースで単純に合計すると、最大約360Wの熱量を1つヒートシンクで処理することになる。
おそらく、ヒートシンクは、3枚のボードに添うようにトライアングル状の筒状になっており、フィンも工夫されていて放熱性はかなり高いのだろうが、それでも、かなり無理があるのではないかと思われる。
しかも、ファンは本体上部の排気ファンだけなので、自作用の市販のCPUクーラーのように直接ヒートシンクに風を送るファンはない。
また、市販のファンレスCPUクーラーがファンなしでCPUを冷却するために非常に大きなヒートシンクを積んでいることを考えれば、CPUとデュアルGPU兼用のファンレスのヒートシンクでは無理があると考えるのが普通だろう。

したがって、冷却性にはかなり無理があるのではないかと考えられる。
もちろん、Apple側の考えではこれで十分という計算なのかもしれないが、正直言って無謀なように見えてしまう。
冬ならともかく、夏場室温が高い時期に、このMac Proで負荷がかかる動画処理・編集を行った場合、最初の数十分はまだいいだろうが、長時間にわたって高負荷状態が続けば、冷却は追いつかなくなり、CPU、GPU温度は急上昇することは予想される。
場合によっては、CPU、GPU温度ともに90度前後になることがあるかもしれないが、そうなっても個人的には驚きはない。

また、ダストフィルターが存在しないことも温度上昇の要因になりそうな気がする。
もちろん、ダストフィルターがないことで内部が埃だらけになって、文字通り「ゴミ箱」になってしまうこともあるが、それ以上に本体下部の通気口に埃が溜まり、吸気不足により温度がさらに上昇する心配がある。
煙突効果のエアフローの場合、空気は下から上へ流れる。
この際、一部の埃は空気の流れとともに上部の排気ファンから排出されるだろうが、上部の排気ファン1つの吸引力(静圧)で内部にある埃の全てを排出することは当然無理だろう。
その結果、長期間使用していると、次第に本体下部に埃が堆積することになるはずである。
この堆積した埃が本体下部の通気口を塞いでいくことになるのは、想像に難くない。
その場合、吸気不足で本体内部が窒息状態となり、内部温度はさらに上昇することになるだろう。
よって、事態はさらに悪化することになるそうだ。
もし、内部の清掃を怠った場合、購入から1年以上が経過した夏、つまり2015年の夏頃、室温の上昇、高負荷な処理によるCPU、GPU温度の上昇、そして通気口が埃まみれになることによる吸気不足でさらに温度上昇、これらが全て重なると故障という最悪の事態が生じる可能性が高い。
しかも、保証期間は過ぎている頃なので、有償修理となる(Apple Care加入時は別)。

このように考えていくと、やはり問題は大きい。
果たして、上記のことをAppleの企画・開発者がどこまで考えたのかは定かではないが、考えていないとすれば検討不足であり、考えた上で販売しているならば、商売上手ではあるものの極めて悪質と言わざるを得ないだろう。
確かに、よく練られた構造であることは認めるが、Mac Proのようにハイスペックな構成にはむかない構造ではないだろうか。
もし、これがMac Miniのようなスペックのマシンであれば、今回の構造は賞賛に値するが、XeonとデュアルGPUの構成、しかも高額な製品では無謀だったのではないだろうか。
ハイスペック構成で高価なパソコンであれば、、十分に冷却可能な設計にすべきであり、購入したユーザーが数年間に渡って安心して使用できる設計にすべきである。
メーカーであれば、当然、その義務と責任がある。
1年後、2年後に故障する可能性があることが容易に予想できるような製品を製造・販売するならば、それは、メーカーの検討不足か悪質かのどちらかである。
消費者の目を引くような斬新なデザインや独自規格により構造を工夫した点はAppleらしいが、無茶なことをやっていいわけではない。
いくらハイスペックで高額なパソコンでも、埃まみれになって故障した円筒形のパソコンは、埃とパーツが捨てられた「ゴミ箱」そのものなのである。

少し辛辣な書き方をしてしまった。
もちろん、必ずしも過度な温度上昇を招いたり、故障するとは限らない。
しかし、購入するなら十分考えた上で決めた方がいいだろう。
何が起こるか分からないので、Apple Careは入っておくべきだ。
また、必要以上にスペックを上げない方が温度上昇しにくいので、その方がいい。
購入した場合には、下部吸気口は埃まみれにしないように注意しなければならない。
また、吸気口を塞ぐようなものは周りに置いてはいけない。
夏場、温度上昇した場合には、外枠をはずして、扇風機の風を当てた方がいい場合もあるかもしれない。
高負荷の作業は長時間行わない(何のために購入したか分からなくなるが・・)。
以上の点に留意した方がいいと思う。

デザインも構造もよく考えられており、エアフローの発想も素晴らしい。
小型で合理的なパソコンである。
しかし、いくら合理性を追求しても、できる事とできない事がある。
スペックに見合った構造で冷却可能ならばいいが、私には、この構造は、Mac Proのようなスペックには相応しいとは思えない。
Mac Miniなら秀作であったが、Mac Proとしては問題作なのではないだろうか?


posted by PC_Considering at 23:27| ケーススタディ(製品別検討) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。